FC2ブログ

トランプツイートと差別的概念

アメリカのトランプ大統領が14日にツイートした内容が大きな批判を呼んでいる。以下、BBCニュースの訳をそのまま掲載するが、野党民主党所属の進歩派女性議員4名を念頭に「政府がまったく完全にひどいことになっている国からもともと来た」のだから、「帰って、もといた国を良くしたらどうだ」とツイートしたのである。

 

しかしながら4名のうち3名はアメリカ生まれであり、残りの一名はソマリア生まれだが12歳の時に家族と共にアメリカに難民として亡命して今日に至たる。言うまでもないことだが、アメリカ生まれの議員に対して他の国へ帰れというのは非常におかしな話である。さらに発言内容を自分自身に適用すれば、自分に猛反対するリベラル勢力が沢山いるアメリカが嫌ならば合衆国大統領などやめて先祖が眠るドイツに「帰って」連邦議会議員になり、ウマが合わないメルケル首相に代わる連邦共和国首相を目指せばよいということになる。

 

今回のツイートが人種差別的だと非難されるのは当然のことである。彼が批判した4名の女性議員のルーツはそれぞれプエルトリコ、パレスチナ、アフリカ諸国であり、そのことから、アメリカ合衆国大統領たるトランプ氏はアメリカ社会で「非白人」とみなされる人々に対して、「よそ者」扱いをしているということが分かる。彼はオバマ前大統領に対してもケニア出身だと因縁をつけたが、同じく政敵であるヒラリー・クリントン元国務長官に対しては少なくとも(どこかの国へ)「帰れ」などとは言っていないようであるから、彼がどんなに否定しようと頭の中に人種差別意識が染みついているのは事実であろう。トランプ氏の暴言には慣れてしまっていたが、さすがに今回の発言は容認できるものではない。しかしながら、トランプ氏は例のごとく批判を浴びるほどムキになって放言ツイートを連発しており、2020年の大統領選挙でまともな候補者が大統領に選ばれることを祈るばかりである。

 

さて、今回のツイートをめぐる報道で気になったことがある。それは、トランプ氏を批判する「リベラルな」マスコミが無意識に「有色人種を」さす「color」という言葉を連発していることである。そもそも、「白人」という概念は生物学的分類として有効な概念ではなく、何をもって「白人」であるか、何をもって「白人」とそれ以外の「有色人種」を分けるかなどは万国共通の定義があるはずもない。今回の4名の議員のうち、よく話題になるオカシオコルテス議員より肌が黒い「白人」は沢山いるだろう。「有色人種」という概念自体がトランプ氏の差別意識の温床になっているのではないか。

 

ついでに言えば、ヨーロッパとアメリカから見て最も東方を指す「極東」という地理概念がある。これこそ時代錯誤かつ差別的な概念であることは言うまでもない。もちろん、世界経済の中心がアジアに完全にシフトしたとしても、我々がヨーロッパやアメリカに対して「極西」という言葉を使ったら、それは同じく差別的な表現になる。非西欧諸国の一員として日本が率先して行うべきなのは、21世紀を公正な社会にするために尽力することである。世界を分断する幼稚な大統領のご機嫌をとるために「賞杯」を設けることではない。民主主義、公正な市場経済、環境保護といった先進国共通の価値観を守ることも重要であるが、「極東」のような差別的呼称の廃止を国際的に求めるのも人々の潜在意識を変えるのに寄与するだろう。このような論題ならば、対立が多い近隣諸国とも歩調を合わせられるかもしれない。

スポンサーサイト



プロフィール

鈴木しんじ

Author:鈴木しんじ
1972年生まれ。

東京都中野区出身。

東京外国語大学外国語学部フランス語学科卒、慶應義塾大学大学院法学研究科博士課程単位取得退学、東京工業大学大学院社会理工学研究科博士課程修了。

東京工業大学博士(理学)

千葉県議会議員、国会議員公設秘書を経験。慶應義塾大学SFC研究所上席所員。武蔵野大学政治経済研究所客員研究員。専門は政治経済学、公共経済学。

最新コメント

カテゴリ

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

QRコード

QR