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欧州議会選挙:二大政党の退潮は問題ではない

23日から26日まで行われた欧州議会選挙の結果については、これまで最大勢力の中道右派と中道左派が退潮し極右および環境リベラル派が躍進したと報道されている。日本に限らず中道左右両派の退潮が民主主義の危機のように報道されているが、今回の選挙結果は(欧州議会が採用している)比例代表制が多党化をもたらすことを実証しただけで、特に驚くべき話ではない。

中道右派の欧州人民党は217議席から180議席へ、中道左派の社会民主進歩同盟も187議席から146議席にそれぞれ議席を減らし、両勢力の合計は過半数を下回った。いわゆる反EU的な「極右」とされる勢力に関しては、イギリスの「ブレクジット党」、「国民戦線」から党名を変更したフランスの「国民連合」、イタリアの「同盟」が勢力を拡大したのは間違いないが、ドイツの「ドイツのための選択肢」とスペインの「VOX」は直近の国政総選挙より得票率を減らした。欧州懐疑派とされる勢力は全体としては前回の206議席を4議席上回った210議席を獲得したにとどまり、定数751の1/3にすら届いておらず、右派勢力全体に関しても伸び悩んだという見方ができよう。一方で、親EUの中道派およびリベラル派である欧州自由民主同盟と環境保護派の欧州緑グループ・欧州自由連盟は議席を大幅に増やし、親EU勢力は全体の約2/3を引き続き確保した。

今回の選挙においては、これまで各国で二大政党として君臨していた中道右派政党と中道左派政党の票の多くが中道派・リベラル派・環境保護派に流れたのであり、いずれも親EUなのだがら既存政党が票を失ったとしてもそれが民主主義にとって問題になる話ではない。選挙制度と政党数の関係でいえば、構造的に単純小選挙区制は二大政党制をもたらし比例代表制は多党制をもたらしやすいと言える。例えば、ドイツは事実上比例代表制なのにも関わらず冷戦期は二大政党制+αで推移してきたものが、冷戦後の社会変化と共に徐々に比例代表制が本来もたらすであろう多党制に変化してきている。今回の欧州議会議員選挙の結果もその一例に他ならないのではないか。

ただ、イギリスやフランスのように仮に国内で有権者の1/3弱が反EU的な感情を持っているのに、国内政治では小選挙区制が取られているゆえに反EU政党が国政選挙で議席をほぼ獲得できないというのは、民意の反映という意味で望ましい状況ではない。国政選挙と欧州議会選挙の選挙制度の違いの是非については、もっと議論されるべきである。そういった意味では、英仏の反EU右派政党は反EUを訴えているにも関わらず、彼らの支持率に見合った正当な議席数と議員報酬を唯一与えてくれるのが欧州議会というのは何とも皮肉な話だ。

個人的には、EUを敵視し離脱したい(または離脱も辞さない)と主張して、あるべきEUの将来像も示さないにもかかわらず、EUの選挙に出馬してさらに議員として報酬をもらうという行為は不純以外の何物でもないと思うが。
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プロフィール

鈴木しんじ

Author:鈴木しんじ
1972年生まれ。

東京都中野区出身。

東京外国語大学外国語学部フランス語学科卒、慶應義塾大学大学院法学研究科博士課程単位取得退学、東京工業大学大学院社会理工学研究科博士課程修了。

東京工業大学博士(理学)

千葉県議会議員、国会議員公設秘書を経験。慶應義塾大学SFC研究所上席所員。武蔵野大学政治経済研究所客員研究員。専門は政治経済学、公共経済学。

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