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早くも正念場を迎えた立憲民主党 - 政権を取る気がない野党第一党は没落する

参議院選挙が終わった。自民党が政権復帰して以来続いている一強多弱の構造は変化していないが、今回の結果は自民党・立憲民主党双方にとって満足がいくものではなかっただろう。

 

まず自民党であるが、大勝した2013年の65議席には届かずとも、自民・公明・維新のいわゆる「改憲勢力」と改憲に好意的な無所属議員で非改選議席も合わせて全体の2/3を確保したかったはずである。しかし結果はそれを4議席下回り、改憲手続きの見通しがより一層不透明になったと言える。安倍首相としては国民民主党を念頭に一部議員の取り込みを狙っているようだが、これまでの例を見る限り5人以上を一気に取り込むことはかなり難しい。仮に国民民主党が改憲議論に応じたとしたらそれは同党の分裂に直結するだろうが、そんなに簡単に実現するような話ではない。

 

言うまでもなく改憲は安倍道理の悲願である。前回2016年の参議院選挙で初めて改憲を容認する勢力が衆参両院で2/3を超えたが、そもそも日本の参議院の選挙制度は単独の政党で過半数を維持することさえ難しい構造になっている。参院選において、連続して自身に好意的な勢力が2/3今日の議席数を維持することなど困難であることは分かっていたはずだ。彼の立場に立てば、それならばなぜ安保法制をゴリ押しした時のように改憲手続きもゴリ押ししようとしなかったのか理解に苦しむ所である。もっとも、違憲な安保法制をゴリ押ししなければ、共産党を含む野党共闘も実現しなかった可能性が高く、野党は今よりももっと弱くなっていたかもしれない。それを考えれば、今回の選挙結果が最終的に安倍氏に改憲を断念させる原因になった場合、因果応報ということになろう。

 

さて一方、野党第一党の立憲民主党であるが、改選議席の8議席の倍を超える17議席を確保したが高揚感とは程遠い状況にある。今回の選挙結果に関しては、元々の改選議席が少なくさらに2017年の衆議院選挙での比例得票率19.9%を下回る15.8%の比例得票率しか残せなかったことは、野党第一党としては自民党に対抗できるレベルにはないことを示したと言える。また、山本太郎氏率いるれいわ新選組が2議席を獲得した以上に強烈な印象を残したことは、同党にとって脅威だろう。

 

個人的には山本太郎氏が消費税廃止を訴えていることに関しては反対である。消費税自体は景気の状態に税収が左右されにくく一人あたりの税収に関しても地域間格差が少ないという点で良い性質を持っていると考えている。いわゆる逆進性の問題に関しても、複数税率ではなく消費税還付を行えばよいと考えている。しかしながら、メッセージの分かりやすさと代替財源に関して(うさん臭さを感じさせつつも)これまで共産党や社民党が主張してきたものよりも具体的であるという点で、れいわ新選組が支持を集める可能性はかなりあると思う。民進党の末期に共産党がかつての民主党支持者から多くの票を奪ったものの、立憲民主党結党後にその多くが同党に流れたことがあった。これを思い出せば、左寄りの中道左派有権者の支持がれいわ新選組に流れていく可能性は十分あると言えよう。

 

立憲民主党への熱気が冷めた理由としては、どの政策を一番中心に考えているのか分かりにくかったことと、有権者から野党第一党としてのリーダーシップを発揮してこなかったと認識されたからであろう。本気で政権を取る気ならば参院選の前に野党の共通公約の叩き台を提示すべきだったし、仮に叩き台として提示したエネルギー政策に対して国民民主党が飲めなかったとしても、それは同党への支持低下にはつながらなかっただろう。国民民主党の自壊を待ちながら自身の勢力を拡大させようとしている印象を(山本太郎氏も含む)有権者に与えたことはかなりのマイナスになったと思う。

 

立憲民主党は政策のプライオリティを明確化させることと政権構想を示すことが重要である。山本氏は、目玉政策を脱原発から消費財廃止にシフトしたように思われるが、消費税廃止立憲民主党にとって飲める話ではないだろうし、もしそれを飲んだら真ん中よりの中道左派層からの支持を失うだろう。私は、立憲民主党の公約の中心ははやり脱原発の実現であるべきだと考える。脱原発でどのようにして経済成長を実現していくのかを中心の議題にさせなければ、枝野氏よりも大衆アピール力がある山本氏にかなりの支持が奪われるだろう。傍から見れば無謀にも見えるが、山本氏は「政権を取りに行く」、「総理大臣を目指す」と公言している。枝野氏は、選挙特番で「今回の51会派の枠組みをいかし、こういう連立政権を組みますという姿を私の責任でしっかりと示していく」と述べた。51会派に対して早急に政権構想を示さなければ立憲民主党は政権を取る気がないと思われ、早くも旧社会党の二の舞になる可能性がある。

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トランプツイートと差別的概念

アメリカのトランプ大統領が14日にツイートした内容が大きな批判を呼んでいる。以下、BBCニュースの訳をそのまま掲載するが、野党民主党所属の進歩派女性議員4名を念頭に「政府がまったく完全にひどいことになっている国からもともと来た」のだから、「帰って、もといた国を良くしたらどうだ」とツイートしたのである。

 

しかしながら4名のうち3名はアメリカ生まれであり、残りの一名はソマリア生まれだが12歳の時に家族と共にアメリカに難民として亡命して今日に至たる。言うまでもないことだが、アメリカ生まれの議員に対して他の国へ帰れというのは非常におかしな話である。さらに発言内容を自分自身に適用すれば、自分に猛反対するリベラル勢力が沢山いるアメリカが嫌ならば合衆国大統領などやめて先祖が眠るドイツに「帰って」連邦議会議員になり、ウマが合わないメルケル首相に代わる連邦共和国首相を目指せばよいということになる。

 

今回のツイートが人種差別的だと非難されるのは当然のことである。彼が批判した4名の女性議員のルーツはそれぞれプエルトリコ、パレスチナ、アフリカ諸国であり、そのことから、アメリカ合衆国大統領たるトランプ氏はアメリカ社会で「非白人」とみなされる人々に対して、「よそ者」扱いをしているということが分かる。彼はオバマ前大統領に対してもケニア出身だと因縁をつけたが、同じく政敵であるヒラリー・クリントン元国務長官に対しては少なくとも(どこかの国へ)「帰れ」などとは言っていないようであるから、彼がどんなに否定しようと頭の中に人種差別意識が染みついているのは事実であろう。トランプ氏の暴言には慣れてしまっていたが、さすがに今回の発言は容認できるものではない。しかしながら、トランプ氏は例のごとく批判を浴びるほどムキになって放言ツイートを連発しており、2020年の大統領選挙でまともな候補者が大統領に選ばれることを祈るばかりである。

 

さて、今回のツイートをめぐる報道で気になったことがある。それは、トランプ氏を批判する「リベラルな」マスコミが無意識に「有色人種を」さす「color」という言葉を連発していることである。そもそも、「白人」という概念は生物学的分類として有効な概念ではなく、何をもって「白人」であるか、何をもって「白人」とそれ以外の「有色人種」を分けるかなどは万国共通の定義があるはずもない。今回の4名の議員のうち、よく話題になるオカシオコルテス議員より肌が黒い「白人」は沢山いるだろう。「有色人種」という概念自体がトランプ氏の差別意識の温床になっているのではないか。

 

ついでに言えば、ヨーロッパとアメリカから見て最も東方を指す「極東」という地理概念がある。これこそ時代錯誤かつ差別的な概念であることは言うまでもない。もちろん、世界経済の中心がアジアに完全にシフトしたとしても、我々がヨーロッパやアメリカに対して「極西」という言葉を使ったら、それは同じく差別的な表現になる。非西欧諸国の一員として日本が率先して行うべきなのは、21世紀を公正な社会にするために尽力することである。世界を分断する幼稚な大統領のご機嫌をとるために「賞杯」を設けることではない。民主主義、公正な市場経済、環境保護といった先進国共通の価値観を守ることも重要であるが、「極東」のような差別的呼称の廃止を国際的に求めるのも人々の潜在意識を変えるのに寄与するだろう。このような論題ならば、対立が多い近隣諸国とも歩調を合わせられるかもしれない。

参議院選挙とれいわ新選組

参議院選挙が始まった。野党4党は全ての一人区で候補者調整を行ったが、4党間で政権構想も共通公約もない以上、自民党から政権を奪還する筋道が見えないのは偽らざるところである。私は、個人的には野党第一党である立憲民主党が野党共闘の積極的にリーダーシップを発揮してこなかったのは、国民民主党と距離を置きたいのが一番の理由だと思っている。国民民主党と距離を縮めるほど、脱原発と共産党を含む野党共闘への対応をめぐって党内対立が続いていた旧民進党時代に逆戻りするのは目に見えている。それは避けたいということなのであろう。

 

しかし、そうした守りの姿勢を続けた結果支持率が低下し、山本太郎氏が率いる「れいわ新選組」という思わぬライバルも登場した。筆者自身の山本氏に対するスタンスは、共感はするが消費税0%という同党の公約は支持できないというところである。消費税に関しては逆進性という問題点はあるものの税収の安定性という優れた性質を持つ以上、消費税を目の敵にすることは全く合理的でないと考えている。現行の消費税の逆進性に関しては生涯所得で考えれば深刻とは言えないという指摘があり、さらに「給付付き税額控除」を導入すればより改善される。れいわ新選組の公約の実現性には疑問符が付くものが多いが、共産党を含む他の左派系・リベラル系野党に比べてよりラディカルであり、新鮮さを感じる人も多いと思う。さらに比例区に今回導入された「比例特定枠」制度を使い、れいわ新選組から比例区で3人以上当選しないと山本氏自らが当選できないようにした潔さも好印象を与えている。

 

今年に入ってから、山本氏は立憲民主党が野党の代表として本気で自民党安倍政権と闘う姿勢が見られないと不満を漏らしていた。当然そのことが令和新選組結成の大きな要因の一つになったのだろうが、立憲民主党の枝野代表には野党第一党の党首として野党をまとめる姿勢がこれまで以上に求められるだろう。野党をまとめるのは国民民主党が自滅してからで良いというのでは遅すぎる。れいわ新選組に限らずより明確な旗印を掲げる政党が出来たらそれに支持者を奪われるだろう。

 

また、国民民主党にしても党勢が上がることは考えにくいが、選挙後には立憲民主党の党勢に影響を与えるような事態が生じるかもしれない。仮に同党が参院選に惨敗した場合、玉木代表が責任を取って辞任するとなると、次期代表として小沢一郎氏の名前が挙がってくることが十分考えられるのである。何故ならば、旧小沢グループ系の国会議員は知らない間に結構な数になっているのだ。まさにステルス作戦である。

 

仮に今回の参議院選挙でれいわ新選組が躍進し、選挙後に小沢氏が国民民主党の代表になったとしたら、両党は野党共闘に関して立憲民主党にプレッシャーをかけてくるだろう。さらに剛腕の小沢氏ならば国民民主党の原発政策だって変更させることは不可能でないかもしれない。そうなった場合、立憲民主党は独自路線を取る大義が薄れるので、やりにくくなるのは容易に想像できる。独自路線に固執すれば、ルノーとの経営統合に反対しながらも将来的なビジョンを全く示せない日産自動車のような後ろ向きな印象を有権者に与えるであろう。

 

枝野代表には、選挙後の政治情勢も見据えて、今回の選挙戦で政権奪還へのビジョンと本気で勝ちいく(つまり改選議席で野党が与党を上回る)姿勢を見せていただきたい所存である。

プロフィール

鈴木しんじ

Author:鈴木しんじ
1972年生まれ。

東京都中野区出身。

東京外国語大学外国語学部フランス語学科卒、慶應義塾大学大学院法学研究科博士課程単位取得退学、東京工業大学大学院社会理工学研究科博士課程修了。

東京工業大学博士(理学)

千葉県議会議員、国会議員公設秘書を経験。慶應義塾大学SFC研究所上席所員。武蔵野大学政治経済研究所客員研究員。専門は政治経済学、公共経済学。

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